Pages

ハイクラス・ラグジュアリー:Clouds Mountain Gorilla Lodge

Clouds Mountain Gorilla Lodge, Uganda - ウガンダの南西部に位置する Nkuringo。ルワンダのキガリからウガンダ国境まで、車でおよそ1時間30分。国境沿いにあるウガンダ側の町Kabaleから、車で3時間のところにある Kisoro 地区。ここは、標高7,200フィートにあり、周辺にはウガンダが誇る Bwindi National Park          写真=Kisoro 地区の美しい山々    
があります。                    (Photo © J.Kemsey)

ここに、昨年の夏オープンしたのが、Nkuringo が誇る Clouds Mountain Gorilla Lodge。このロッジ、いわゆるハイクラス・ラグジュアリー・ロッジ。一人一泊450ドル。それぞれの宿泊ゲストに専属バトラーが付き、「おもてなしの心」を知る日本人でさえも、このロッジが持つ細部にいたる細かな気配りには圧倒。また、粋な心づかいと恵まれた自然環境、隣国コンゴの火山を背景にくわえ、グルメな料理と映画のようなプライベートな空間が、ここでの滞在を極上のものにしてくれます。


       写真=シンプルでおしゃれなインテリアのClouds Mountain
        Gorilla Lodge メイン・ルーム(Photo © J.Kemsey)

じつは、このロッジ、マウンテン・ゴリラに関するエコ・ツアリズムを目的とし、また現地のコミュニティ開発を推進するためのプロジェクトの一環として建設されたもの。Nkuringo に隣接する Bwindi National Park には、およそ300ものマウンテン・ゴリラが生息し、この絶滅危機に瀕する人間に非常に近い動物を一目見ようと、マウンテン・ゴリラトレッキングツーアに参加するため、諸外国から外国人が訪れます。一方で、周辺コミュニティに住む人々は、牛やヤギを飼い、畑を耕し、アイリッシュ・ポテトやビーンズを育て生活をしています。子供たちは、片道4時間かけて学校へ通い、その多くは、一日一食の食事しか摂っておらず、非常に貧しい生活を強いられています。

そこで考えられたのが、ラグジュアリー・ロッジを含めたコミュニティ開発プロジェクトロッジの運営により、マウンテン・ゴリラをはじめとするエコ・ツアリズムを推進すると共に、エコ・ツアリズムの周辺活動を行うことで収入や雇用を創出します。これにより、Nkuringo 周辺住民が直面するこうした貧困の削減や開発に貢献し、コミュニティ全体の生活向上を図る同時に、Bwindi National Park の環境・生物多様性を確保し、マウンテン・ゴリラを保護するというもの。また、ロッジを含め、開発プロジェクトそのもののオーナーシップをコミュニティが持つという、現地コミュニティを完全に取り込んだ画期的な活動です

ロッジの運営にはウガンダを拠点に展開するサファリ会社が協力し、環境 NGO 団体 IGCP 主導の下に行われているこのプロジェクト。大まかに分けて3つのコンポーネントがあります:


① ロッジ運営による開発活動・雇 用・収入創出
② 宿泊ゲスト・旅行者の観光によ る雇用・収入創出
Nkuringo Community Development Fund(NCDF) の設立

                                                 写真=Bwindi のマウンテン・ゴリラ                               (Photo © J.Kemsey) 

① ロッジ運営による開発活動・雇用・収入創出:
Clouds Mountain Gorilla Lodge のスタッフは、全て現地の若者。また、食材や薪なども、クオリティー・コントロールを行いながら現地の人々から調達します。こうして現地に即した運営を行うことで、Nkuringo 周辺コミュニティの雇用を増やし、エコ・ツアリズムの活動をコミュニティへ還元しています。ロッジが建つ土地は、もともとコミュニティに属するもの。ロッジの利益の一部は、Nkuringo Community Development Fund (NCDF: 以下参照) を通して、コミュニティが必要とする開発プロジェクトの資金として使われる仕組みになっています。その他、農業開発や地元学校の支援など、ロッジとしての支援活動も行っています。

② 宿泊ゲスト・旅行者の観光による雇用・収入創出:
ここに滞在するゲストのほとんどが、マウンテン・ゴリラ・トレッキングのエコ・ツアーを目的とした人々。彼らの多くは、現地コミュニティの文化にも興味を持ち、現地の生活様式の見学や、コミュニティ散策などのアクティビティにも参加します。こうしたアクティビティのアレンジや調整なども、NCDF (以下参照) により形成された現地の人々による現地ガイド事務所で行われ、ここでも雇用・収入が創出されます。また、こうした活動を通して、Nkuringo の持つ自然環境やエコ・ツアリズム、 マウンテンゴリラの保護に対するコミュニティ
の意築識向上も促進され、ひいては、活動全体に対する Nkuringo コミュニティのオーナーシップ構築につながっています。 /  写真右上=バスケットを編むPigmi 族の女性 (Photo © J.Kemsey)

Nkuringo Community Development Fund(NCDF)の設立:
特にハイライトとなるのが、Nkuringo Community Development Fund(NCDF)の設立。ロッジの収益の一部が、NCDF の資金に充てられており、団体そのものは、完全に Nkuringo コミュニティで成り立っています。NCDF では、Nkuringo にあるそれぞれの村の代表が集まり、月に一度、村の問題を持ち寄り話合いを進めます。ロッジの収益から還元された資金は、この話し合いで決まったプロジェクト活動に充てられています。 /  写真右上=家畜を移動させるNkuringo周辺住民(Photo © J.Kemsey)


こうしたコンポーネントからなるそれぞれの活動全体を通して、環境や生物多様性の重要性、エコツアリズム、マウンテン・ゴリラに関するコミュニティの意識が向上され、開発活動におけるコミュニティのオーナーシップが構築されています。

日本でもここ数年、特に注目を浴びている「企業の社会的責任(CSR)」「グローバル・サステイナブル・ビジネス」。企業の利益とは直接結びつかないものの、企業による社会貢献の活動を推進したり、あるいは、社会貢献型の事業を開発し、社会貢献・開発をすることで企業利益を生み出す、というパートナーシップのコンセプト。どちらにしても、開発における企業の役割が非常に重要とされており、「企業にしかできないこと」、「企業だからこそできること」への認識が非常に高まっています。企業と開発コミュニティーのパートナーシップは、日本でも少しずつ広まっていますが、それでもやはり、まだまだ開拓の余地はあり、双方の間には壁が存在しています。

ビジネス・セクターと開発コミュニティのコラボレーション。アフリカでは、特に珍しいことではなく、企業の「利益と専門をコミュニティに還元しよう」という意識が、行動につながっています。今回のClouds Mountain Gorilla Lodgeは、環境とコミュニティ開発の一例ですが、こうしてご紹介することで、新しいアイディア・次のコラボレーションが生まれればと、願っています。

*Clounds Mountain Gorilla Lodge 滞在の詳細は、次のブログエントリーで。

コンゴ蜂蜜プロジェクト:紛争とのかかわり

前回ご紹介したコンゴでの蜂蜜産業におけるコミュニティー開発プロジェクト。このプロジェクト、特に他と異なるのが紛争との関わりです。視察に同行してくださった Bee Keepers’ Association 代表の Mutere Timothi さんにお話を聞かせていただきました。

視察の一環として、Kibumba にある Association の事務所の一つに立ち寄りました。Bee Keepers から蜂蜜を購入したり、蜂蜜をプロセスしたりするこの事務所は、今現
在、もぬけの殻。昨年10月に悪化したコンゴ・ゴマ周辺の紛争で、軍や過激派に事務所を占領されたそうです。幸い、Mutere さんは危険を察知し、事前にできるだけ多くの道具や機材とともにゴマの家に非難したそうです。
軍などが撤退し状況も落ち着き、事務所へ戻ると、今度は知らないコンゴ人が自分のオフィスとしてビジネスを始めてしまっていたとのこと。交渉の末、今月にはこのコンゴ人、オフィスから退去し、また蜂蜜事務所として活動が再開できるそうです。  /  写真右上=軍などの撤退後の事務所と、そこに入り仕事場として使っていた現地のコンゴ人(Photo © Kadae.C)

最も困難な問題は何ですか?との質問に、Mutere さんはこう応えてくれました「今一番の問題は、蜂蜜を Kivu まで運ぶ手段がないことなんです。去年(2008年)の10月に起こった紛争の間に、運搬に使っていた車やバイクなど、全て軍や過激派に取られてしまいましたから・・・。」  

私たちがゴマから走ってきたこのとてつもなく長い一本道は、非常に足元が悪く、重く大きな車に乗りシートベルトをしっかりとはめていても、常にお尻が宙に浮き、車の屋根で頭を打ってしまうほどです。交通手段がなければ、彼らはこの道のりをどうやって進んでいくのだろう・・・しかも蜂蜜を抱えて。あるときは、いつか車が通り、便乗させてもらえることを願いながら徒歩で進み、あるときは、木でつくられた現地の乗り物「ジュグデゥ」に乗り、途方もない道のりを少しずつ前に進み・・・。

   写真=ゴマから Kibumba へ行く道。Virunga National Parkへも続く
   長い長い一本道 (Photo © Kadae.C)


Mutere さんは、こうも教えてくれました:「・・・軍がやってきて、蜂蜜を探し始めたのです。しかし、蜜はすでに収穫済みで残っておらず、それに気がつくと今度は蜂の巣に火をつけ燃やし始めたのです。そして、施設のドアや窓、水貯蔵タンクを破壊していったのです。2007年10月のことでした。」

今だからこそ、ゴマの町にも活気が戻り、コミュニティー周辺も一見状況がおちついたように見えます。しかし、こうして直接話しを聞くと、やはり紛争はあらゆるところに深く跡を残しているのです。まだ、紛争は終わっていないのです。

Kibumba の事務所での作業を再開し、蜂蜜プロセスを再開するためには、非難した機材をゴマから持ち運び、軍によって破壊された蜂の巣をつくり取り付け、略奪された機材や物資を再度見つける必要があります。3年続いたこのプロジェクト。Bee Keepers やMutere さんをはじめ、Associations に関わる全ての人の3年分の努力と希望が集まった蜂蜜プロジェクト。また、ゼロからのスタートです。

      写真=Bee Keeprs Associationsの代表を務める
      Mutere Timothi 氏・81歳 (Photo © Kadae.C)

Mutere さんに尋ねました:「どうして、このプロジェクトに参加することに決めたんですか?」その問いかけに、笑顔でこう応えてくれました:「はじめてこのプロジェクトの話を聞き、Associations の存在について学んだとき、“これが私のやりたいことだ”っと情熱を感じたからです。」

開発分野で仕事をしていて、困難な状況に直面してもこうして前向きに生きる彼らの生の声を聞くと、こちらがエンパワーされます。「がんばらねば。」と、勇気をもらいます。

コンゴ蜂蜜産業におけるコミュニティー開発

Congo 2月後半、環境・生物多様性保護を目的とした蜂蜜産業におけるコミュニティー開発プロジェクト視察のため、コンゴのゴマへ行って来ました。キガリからは車で3時間ほど。コンゴとの国境沿いにあるルワンダの町 Gisenyi からゴマへ入りました。

一歩国境を越えると、ガラリと風景が変わります。ゴミもなく、規則に沿い静かで落ち着いた風景とは一転、今度はあちこちから聞こえる騒々しいもの音と慌しい通りに出くわします。ゴマの中心部はエネルギーが渦巻いています。野菜やお米、バティック、男性用の靴、ぬいぐるみやおもちゃなど、通りは驚くほど商業で賑わい、人々の活気に満ち溢れています。車やバイクの音、砂埃、人々の笑い声や通りを隔てて行われる交渉。メディアから通してみるゴマのイメージとは違ったものでした。
                   
                           
                               写真右=ジュグデュにのり
                               商業活動する少年・ゴマ
                               (Photo © Kadae.C)

今回のプロジェクト-蜂蜜の生産過程における質向上と、蜂蜜の市場拡大、および生産を通じた現地コミュニティーの雇用・収入拡大-は、とくに Virunga National Park 国立公園周辺の村やコミュニティーを対象としたもの。7箇所に合計440 もの Bee Keepers Associations が点在しています。視察は、ゴマから22 km 離れた Kibumba 地区で行われました。この地区では、3つのAssocations が活動し、合計33人もの Bee Keepers が蜂蜜の栽培に関わっています。


現地の人々は、蜜採集のために、伝統的な蜂の巣を木の上や茂みの中に取り付けますが、これが国立公園内で行われた場合、木を伐採し、自然の生態系に影響を与え、動物を含む保護の対象となっている生物多様性を破壊する危険があります。それだけでなく、巣を設置し蜜を採取する人(Bee Keepers)自身も、マウンテンゴリラやバッファローなどの動物、また国立公園内をパトロールするレンジャーとの衝突など、危険にさらされる可能性があるのです。もちろん、許可なく国立公園への立ち入りは禁止されていますが、貧困にあえぎ、家族に満足のゆく食事さえ与えることのできない周辺住民にとって、国立公園内で作業が禁止されていようと、そんなことは構っていられません。蜜採取は命にも代えられないものなのです。

そこで、周辺コミュニティの生活向上を目指し、Bee Keepers の公園外での蜂蜜栽培および市場の拡大、質・技術の向上などを支援し、同時に Virunga National Park の生物多様性、環境を保護し、絶滅危機にさらされているマウンテンゴリラを保護しようというのが、このプロジェクトです。生物多様性・環境保護活動において、コミュニティー開発が基本であることが、明確に打ち出されています。

    写真=Kibumba地区でのBee Keeping(BK)プロジェクト.
     BK Associationの代表(真ん中)とBee Keeper
s (Photo © Kadae.C)

私は個人的に蜂蜜が好きではなく、人に進められてもめったに食べませんが、もちろん、今回のプロジェクト視察で現地の人から進められれば、試食をしないわけにはいきません。でも、食べてみると、なんとこれまで食べたことのない味でとてもおいしいんです。なぜだろう、と不思議に思いつつも、気がつくと何度も何度もスプーンに取り、このコンゴ産蜂蜜を食べていました。ここで取れる蜂蜜ですが、ミツバチによって Virunga National Park 内のお花から集められた蜜だそうです。他に、ユーカリから取れた蜜もあるのだそう。

    

   写真=蜂の巣にできた蜜(左) ・ Virunga 産蜂蜜(右)(Photo © Kadae.C)


*コンゴ Kibumba 産蜂蜜を含め、プロジェクトの詳細は、IGCP にコンタクトしてください。また、今回のコンゴ視察は、現地機関のインストラクションおよび現地専門家の同行のもと行っています。