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コンゴ蜂蜜プロジェクト:紛争とのかかわり

前回ご紹介したコンゴでの蜂蜜産業におけるコミュニティー開発プロジェクト。このプロジェクト、特に他と異なるのが紛争との関わりです。視察に同行してくださった Bee Keepers’ Association 代表の Mutere Timothi さんにお話を聞かせていただきました。

視察の一環として、Kibumba にある Association の事務所の一つに立ち寄りました。Bee Keepers から蜂蜜を購入したり、蜂蜜をプロセスしたりするこの事務所は、今現
在、もぬけの殻。昨年10月に悪化したコンゴ・ゴマ周辺の紛争で、軍や過激派に事務所を占領されたそうです。幸い、Mutere さんは危険を察知し、事前にできるだけ多くの道具や機材とともにゴマの家に非難したそうです。
軍などが撤退し状況も落ち着き、事務所へ戻ると、今度は知らないコンゴ人が自分のオフィスとしてビジネスを始めてしまっていたとのこと。交渉の末、今月にはこのコンゴ人、オフィスから退去し、また蜂蜜事務所として活動が再開できるそうです。  /  写真右上=軍などの撤退後の事務所と、そこに入り仕事場として使っていた現地のコンゴ人(Photo © Kadae.C)

最も困難な問題は何ですか?との質問に、Mutere さんはこう応えてくれました「今一番の問題は、蜂蜜を Kivu まで運ぶ手段がないことなんです。去年(2008年)の10月に起こった紛争の間に、運搬に使っていた車やバイクなど、全て軍や過激派に取られてしまいましたから・・・。」  

私たちがゴマから走ってきたこのとてつもなく長い一本道は、非常に足元が悪く、重く大きな車に乗りシートベルトをしっかりとはめていても、常にお尻が宙に浮き、車の屋根で頭を打ってしまうほどです。交通手段がなければ、彼らはこの道のりをどうやって進んでいくのだろう・・・しかも蜂蜜を抱えて。あるときは、いつか車が通り、便乗させてもらえることを願いながら徒歩で進み、あるときは、木でつくられた現地の乗り物「ジュグデゥ」に乗り、途方もない道のりを少しずつ前に進み・・・。

   写真=ゴマから Kibumba へ行く道。Virunga National Parkへも続く
   長い長い一本道 (Photo © Kadae.C)


Mutere さんは、こうも教えてくれました:「・・・軍がやってきて、蜂蜜を探し始めたのです。しかし、蜜はすでに収穫済みで残っておらず、それに気がつくと今度は蜂の巣に火をつけ燃やし始めたのです。そして、施設のドアや窓、水貯蔵タンクを破壊していったのです。2007年10月のことでした。」

今だからこそ、ゴマの町にも活気が戻り、コミュニティー周辺も一見状況がおちついたように見えます。しかし、こうして直接話しを聞くと、やはり紛争はあらゆるところに深く跡を残しているのです。まだ、紛争は終わっていないのです。

Kibumba の事務所での作業を再開し、蜂蜜プロセスを再開するためには、非難した機材をゴマから持ち運び、軍によって破壊された蜂の巣をつくり取り付け、略奪された機材や物資を再度見つける必要があります。3年続いたこのプロジェクト。Bee Keepers やMutere さんをはじめ、Associations に関わる全ての人の3年分の努力と希望が集まった蜂蜜プロジェクト。また、ゼロからのスタートです。

      写真=Bee Keeprs Associationsの代表を務める
      Mutere Timothi 氏・81歳 (Photo © Kadae.C)

Mutere さんに尋ねました:「どうして、このプロジェクトに参加することに決めたんですか?」その問いかけに、笑顔でこう応えてくれました:「はじめてこのプロジェクトの話を聞き、Associations の存在について学んだとき、“これが私のやりたいことだ”っと情熱を感じたからです。」

開発分野で仕事をしていて、困難な状況に直面してもこうして前向きに生きる彼らの生の声を聞くと、こちらがエンパワーされます。「がんばらねば。」と、勇気をもらいます。